第20章 完全に消える

黒谷優は、自分がどうやって家に辿り着いたのか覚えていなかった。

魂の抜けた躯みたいに足を引きずり、彼はそのまま物置部屋へ閉じこもる。そこは南坂海乃が普段、雑多なものを押し込んでいる場所で――この家の中で、彼女だけの「逃げ場」でもあった。

部屋の隅に、まだ捨てられずに残っている段ボールがひとつ。

黒谷優は震える手で、それを開けた。

中に詰まっていたのは、彼女が持って行き忘れた古い私物ばかりだった。

期限の切れた映画の半券。あれは、初めてのデートで観た映画の――。

色褪せたペアマグ。新婚一年目、はしゃいで買ったもの――。

そして、小さな小さなベビー服。楓花を授かったばかりの頃、海乃...

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